はじめてのオンラインABD「ティール組織」

いま、塩尻で新しい学校をつくろうという動きがあります。
0からつくる、まったく新しい民間の学校です。この学校を、どんな場所にしていくか?
子どもたちのために、どんな授業や、どんな人が必要だろうか?
今まさに、学校のアイデアは広がっている途中です。
本連載では、このミーティングの内容を中心に、学校をめぐる動きをレポートしていきます。

今回は「はじめてのオンラインABD」です。

はじめてのオンラインABD「ティール組織」

「ゆっこの部屋」は、参加者それぞれが抱えている思いを語り合い、対話することをメインに会を重ねています。話題は、自分自身の体験や経験が出発点となることが主ですが、時には誰かから得た学びをシェアすることもあります。

そこで今回実施したのは、アクティブ・ブック・ダイアローグ(通称ABD)という形式の読書会です。ABDとは、簡単に言えば、1冊の本を分担して読んでお互いに発表することで、短時間で読みたい本を読むことができる読書手法です。
今年の2月まではABDを実際にイベントとして行い、苫野一徳さんの著書を学んできました。実際に集まってのイベントが難しくなった今、初めてオンラインでの読書会を試してみました。(ABDについて、詳細はこちらをご覧ください。)

今回読むのは、総ページ数592ページの分厚い本『ティール組織』(フレデリック・ラルー著、英治出版)です。

山田さんを通じて、『ティール組織』の監修をされている嘉村賢州さんとお話する機会を設けることになり、著書に少しでも触れよう、と急遽企画したのが今回の読書会でした。

とはいえ、ティール組織のすべてを知るには時間も短く、人数も少ない。このため今回の読書会は、ティール組織への知見を深めることよりも「教育を考える新たな視点を増やす」ことを目的にしました。これまでのABDでは、教育哲学を専門とする苫野一徳さんの著書を読んできましたが、幅広い視野で教育をとらえるためにも、組織論の視点で教育を見ることも重要だと考えました。

はじめてのオンラインABD

イベントには8名が参加してくれました。読んだのは第三部「進化型(ティール)組織を創造する」。その名の通り、ティール組織を実現のポイントが綴られた章です。さっそくページを分割して担当をわりふり、各自が読んで要約文を作成します。要約文は、通常は紙に書きだしていきますが、今回はGoogle スライドで入力しました。この要約を作る作業は、読みながらまとめたり、読んでまとめたりと、人によって書き方はさまざま。しかし毎回ながら、結構大変な作業でもあります。

ティール組織

スライド作成後は、最初のページから順番に内容をプレゼンしていきます。オンラインでは、会場を借りて行うときよりも、参加者がどう感じたかの反応がわかりにくいという点があります。そこで、Mentimeterというツールを使い、プレゼンを聞いて気になったキーワードを可視化しました。各参加者が気になったキーワードを入力すると、より人数が多いワードが大きく表示されるというツールです。

第三部を読んだ結果、参加者の皆さんの関心はこのようになりました。

はじめてのオンラインABD「ティール組織」

意外にも共通で気になったキーワードは「存在目的」だけ。それ以外は、多少の似たワードはありつつもほぼバラバラでした。ここには、いつもの「ゆっこの部屋」に集まるメンバーの所属の多様さが表れているように思います。組織によって、ありたい姿や理想も異なり、それゆえに実現手法も異なります。ティール組織のどの点を参考にしたいかというポイントも、さまざまに違ってきて、それぞれが自分の明日からの行動に生かしたい点を見つけていたようでした。

2時間のイベントのうち、要約を書く時間も含む読書時間は約30分でした。たったそれだけの時間でも、分厚い書籍の約三分の一を読み終えることができました。しかも、本の概要を知ることで、続きが読みたくなったという感想も出ていました。

それぞれのティール組織

読み終えてみて私が思ったのは、ティール組織はさほど「雲の上の存在」ではなかった、ということ。

ティール組織には3つのポイントがあります。「自主経営(セルフマネジメント)」「全体性(ホールネス)」「存在目的」という3つのポイントの中で、今回多くの参加者に響いたのは「存在目的」でした。私たちは組織の中での自分の役割を意識します。

でも、役割や責務にとらわれすぎると、そもそも自分はここで何をしたかったのかを思い出せなくなってしまう。ティール組織は、個人が自分らしさを保ったまま、組織の「存在目的」にそって行動することで、組織も個人も元気になるように働きかける仕組みが不可欠です。

その仕組みをつくるための様々なポイントについて、第三部では学ぶことができました。仕組みをつくる際にも、一気にすべてを構築してしまうのではなく、何か1つから始めて、だんだんと規模を大きくしていくことが必要だといいます。

Mentimeterにも表れていたように、各自がそれぞれ自分にとっての第1歩を拾っていた印象です。

オンラインABDは「ゆるくていい、出会いの場」

終了後に、簡単に今回のオンラインABDを振り返りました。わかったことは、「移動しなくていい」「自分にとっての快適な環境でできる」というオンラインならではの良さです。イベントでは、長距離を片道1時間かけて移動して参加される方もいらっしゃいます。特に地方では、車でしか移動できないので、懇親会をしたとしても時間の制約や、飲酒の制限がかかります。こうした負担がなく、お酒を飲みながらでも、ベッドに寝転がりながらでも(!)できる。こうした良さは、心理的な負担をかなり楽にすることがわかりました。
加えて、知的好奇心が短時間で満たされる!という感想が。とても一人では読み切れなさそうな大作や、読もうとすら思わなかった本も、誰かとなら短時間で読める。しかも、対話によって深い学びになる。移動時間0で、快適空間で、知的好奇心が満たされるオンラインABDは、気軽に人が出会う場としてはとてもよいと感じました。

最後に参加者の山田さんが言っていたことが印象に残ります。

「好きなものがわからない」という若い人は多い。でも、おそらくまだ出会っていないだけ。出会っていないものを好きかどうかなんてわからない。

とすれば、好きなものがわからない人は、とにかく出会うことが必要なのかもしれません。知らないことを調べてみたり、誰かと話したり、自分の考えを言葉にしたりするには、ABDはとてもよい機会になりそうです。

今後も機会をみて開催していきます。