スキマな「一本桜」を見に行こう

松本市や、長野県内の一本桜をご紹介します。美しさの中に力強さと儚さ、そして可愛らしさを兼ね備える一本桜の魅力を、みなさんにも知っていただければ嬉しいです。

スキマな「一本桜」を見に行こう

悲しい時も、心穏やかな時も、わたしは春になると「桜を見に行こう」と思います。連なって咲く“ピチピチした”桜並木はもちろん魅力的ですが、孤独で優美な一本桜を特に好ましく思います。

わたしの運営する観光WEBメディア「Skima信州」には、毎年桜前線とともに右往左往と撮影し続けた一本桜が掲載されています。今回は桜特集の中から松本や、長野県内でわたしが特に気に入っている一本桜をご紹介。美しさの中に力強さと儚さ、そして可愛らしさを兼ね備える一本桜の魅力を、みなさんにも知っていただければ嬉しいです。

桜はなぜほんのりピンクに色づくのでしょうか。昔は「亡くなった方の血が樹に染み込んで花を染めるのだ」と考えられていました。死体を木の下に埋めていた時代のお話です。平安時代末期の歌人・西行の詠んだ和歌「願はくば 花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」には、そんな往時の桜に対する信仰心が窺えます。ちなみに「如月の望月の頃」にあたる旧暦2月15日はお釈迦様の命日(入滅の日)、西行は次の日の旧暦2月16日に亡くなりました。

名所揃い「南信州の一本桜」に込められた願い

仏教と関係の深い桜は、お寺やお墓に植えられていることも多いですよね。南信州には飯田市を中心に樹齢300年を超える一本桜が多く残っていますが、これは江戸時代に飯田藩の第二代藩主である脇坂安政が2人の兄の菩提を弔うため、「弥陀の四十八願」として四十八箇所のお寺に一本桜を植えたことに大きく関係しています。

飯田市正永寺の一本桜

飯田市「正永寺の枝垂れ桜」(地図)

中でもわたしが大好きな一本桜、飯田市にある「正永寺の枝垂れ桜」は樹齢推定400年。流れ落ちる滝のように枝垂れる桜の花は、赤く色づいて可憐さを感じさせます。飯田駅から歩いて15分ほど、桜の季節に、どうぞ。

松本市波田「安養寺のしだれ桜」

波田地区の安養寺には、樹齢300〜500年の一本桜が20本以上も咲き誇ります。「20本の一本桜」と聞くと矛盾を感じますが、樹齢も数百年を越えればわたしにとってそれは一本桜です。安養寺のしだれ桜が美しいのは、水の張った田んぼに映る水鏡の姿。毎年多くのカメラマンや花見客の訪れる人気のスポットです。

松本市安養寺の彼岸しだれ

旧波田町三溝「安養寺のしだれ桜」(地図)

大きすぎてわたしのカメラには収まりきりませんでしたが、安養寺ご本堂真正面にある2本の桜は合掌するように対になってたたずんでいます。お寺や神社には、狛犬のように対になって植えられている桜も少なくありません。例えば長野市大岡地区にある「天宗寺の合掌桜」は、樹齢400年のしだれ桜が手を合わせるようにお堂の前に2本並んでいます。

長野市天宗寺の合掌桜

長野市大岡「天宗寺の合掌桜」(地図)

松本城「清正公 駒つなぎの桜」

本当に馬をつないだかはともかく、全国各所にある「駒つなぎの桜」。松本城にある駒つなぎの桜には、こんな伝説が残っています。

松本城の桜

黄昏時の松本城と「清正公 駒つなぎの桜」(地図)

松本城が築城された際に松本城主・石川康長公が、江戸からの帰りに立ち寄った熊本城初代藩主・加藤清正公をもてなし、お土産に選りすぐりの名馬を2頭を連れて「どちらか1頭を差し上げます」とおっしゃいました。清正公は「あなたほどの目利きが選んだ名馬をどうしてわたしが選ぶことができましょう」と2頭とも連れて帰ってしまいます。清正公の機転に皆は感心したそうですが、その時につないでいたのが「清正公 駒つなぎの桜」なのだそうです。実際に見てみると明らかに樹齢が合わないところも伝説の面白いところ。「かつてきっとここにあった一本桜」に思いを馳せながらご覧ください。

阿智村「義経 駒つなぎの桜」

駒つなぎといえば、長野県南部の阿智村の旧東山道沿いには源義経が京から奥州へと下る際に馬をつないだとされる「義経 駒つなぎの桜」があります。推定樹齢は500〜800年のためやはり時代は合いませんが、大した問題ではありません。「駒つなぎの影に歴史と伝説あり」。一本桜をご覧の際は、その背景にあるストーリーにも目を向けてみてくださいね。

スキマな一本桜を見に行こう

松本の桜スポットをご紹介するつもりが、信州全域の一本桜を盛り込んでしまいました。かつ一般的な「お花見スポット」に選ばれるような桜はあまりご紹介できていません。Skima信州は「定番」や「人気」のスキマにあるような、“教えたいけど知られたくない”スポットが大好きなのです。
いつもは素通りしてしまう道、足を伸ばさない場所にもしも気になる一本桜があったなら、ぜひ訪れてみてください!

Skima信州:https://skima-shinshu.com