【独立・開業】「自分の責任」を楽しみながら仕事をする。家族との時間と、やりがいを叶えた表札屋さん
今回取材したのは、"家族の幸せ印"をテーマとする表札屋「家印(いえじるし)」の吉江大紀(よしえ ひろのり)さんです。
家の玄関に設置される、住む人の名を表す表札。その表札をデザインするブランドが長野県塩尻市にあります。
“家族の幸せ印” をテーマとする表札屋「家印(いえじるし)」は、看板デザイナーである吉江大紀(よしえ ひろのり)さんが、14年間勤めた看板会社を退職した後、2017年5月に立ち上げました。彼の企画・デザインする表札は、カフェの看板のようにオシャレであると同時に、素材本来の経年変化を引き立たせるシンプルさが魅力です。



全国から注文が来るという表札ブランドですが、一般的には安定と考えられている会社を辞めて事業を始めたことに、不安は無かったのでしょうか?
「開業は、不安以上に自分の責任を楽しめるという価値がある」と吉江さん。話を伺ってみました。

塩尻にある表札ブランド「家印」
家印(いえじるし)とは?
吉江さんが長野県塩尻市で立ち上げた表札ブランド。家の表札のほか、店舗の看板の企画提案、デザインを手がけます。

漢字表札もおしゃれに。

店舗の看板。店主と相談しながら作り上げていく。
独立・開業のきっかけは、家族との時間と、名前への思い
吉江さんが看板会社で働く日々を送る中で、35歳の時にふと思ったのは、このまま定年まで働けるのか——。
忙しさから家族と食卓を囲むこともできず、家に帰れば子供たちは寝ている時間。家族と過ごす時間について考え始めたことから、時間に融通をきかせられる働きかたをしたい、という気持ちが出てきました。
そこから独立という選択肢を持ち始め、自分の商品を手掛けたい、事業をやってみたい、と志します。自分の作りたい商品とは、家に住む人の “名前を表す表札” です。
「子どもの頃は、自分の名前を正しく読んでもらえたことが少なく、コンプレックスを持っていました。また、自分の子どもに名前をつけたことからも、名前への思いが深まって。名前って大事だな、と。」
まるで店の看板のように、家の印として建てた人の思いが伝わるような、その家に住む家族の名前を表す表札をつくりたい、という気持ちが高まっていったそう。
「看板はお店の方が人生をかけてつくっている。表札も同じイメージでつくってもらいたいなと思いました。」

家族が増えるとパズルのように増やせる六角形の表札。
事業計画書を作ったことで挑戦したいという気持ちが明確に。開業は、自分の責任を楽しめる機会。
開業を決めた後は、塩尻商工会議所が主催の開業スクールに行ったり、中小企業診断士に相談したりしながら、事業計画書を作っていきました。目標、売り上げ、どういうお店にしたいのかなどを、明確にしたそうです。開業に不安はなかったのでしょうか?
「事業計画書を作ったことで不安が自信へと変わり、やりたい、という気持ちがはっきりしました。今までの経験を活かして、自分のデザインを「家印」でやりたいと強く思うようになりました。」

「家印で挑戦したい気持ちが明確になった」と吉江さん
開業後はデザインや運営方法を、すべて自分の意志で決めていきます。こだわりも込められると同時に、結果も自分次第。
「会社にいたときの知識は全て活かされているので、会社には感謝しています。しかし、達成感を味わいづらかったところもありました。今は、自分の思った通りに進められるので、より仕事にやりがいを感じられています。ただ、もし業績が悪くなったとしても、すべてが自分の責任。しかし、不安以上に、自分の責任を楽しめています。」

素材のぬくもりが活かされている表札たち。
経年変化を味わえるデザイン。こだわりを知ってもらう営業は試行錯誤。
デザインは、最近の家の外観や、暮らしに合うように心がけているとのこと。経年変化も楽しめるようにデザインしています。
「経年変化は、暮らしと共に必ず自然に現れるもの。5円玉の素材である真鍮は黒っぽくなるし、木だって削れてくる。だけど、それは家族の年月を表しているもの。味として、変化を楽しめるようなデザインにしています。変化を遅らせるコーティングをあえて望まないお客様もいます。」

古材にレーザー彫刻を施している
お客さんと吉江さんをつなげるのはインスタグラムやホームページ、商業施設や住宅メーカーが主催するマルシェイベントです。会社には売り込みの専門部門があったので、開業して初めて広報を行うことになりました。商品の問い合わせも最初は少なく、知ってもらうまではとても不安だったとのこと。
そんなときに一役買ったのが、開業当初から開設しているインスタグラム。商品の事例や商品説明をふまえた投稿をしています。試行錯誤を続けて今のかたちになったそう。
「インスタグラムで知ってもらい、ホームページに飛んでくれる方がとても多い。ここまで事業を続けられたのもインスタグラムのおかげだと思っています。」
ホームページには吉江さんの思いがつづられていて、思いが通じたお客さんは全国にいます。家に取り付けた写真が送られてくると、とても励みになるそう。家に帰るのが楽しみ、愛着がわきます、などの言葉も添えられてくるそうです。

表札は家のメーカーやホームセンターで取り扱っていることが多い。こだわりを伝える事業者はあまり多くはない。
起業してからは、出会えた方や家族への感謝の気持ちが深まったという吉江さん。
「全国からメッセージを送ってくださるお客さんはもちろんのこと、自営業を営む仲間たちなど、たくさんの楽しい方々と出会えました。交友関係が広がったことはとても嬉しいです。そして、ここまで仕事を楽しくできているのは、なにより家族の理解と協力があったおかげ。とっても感謝しています。」
今後は店主の思いを表す看板も手がけていきたい
今は表札を主に手掛けていますが、今後は店舗の看板に携わる機会も増やしたいとのこと。看板は、お店のコンセプトを店主から聞き取り、0からデザインします。ロゴがあればそれに合わせますが、無ければロゴからつくります。
「看板は店主の思いを宿すもの。看板が無くては、お店を表すことができないと思っています。オーナーさんの気持ちや思いを聞いて、看板に表したい。看板はオープン時から店に寄り添うものなので、お店の立ち上げにかかわれるのは嬉しいです。」
不安を伴う開業ですが、事業計画を立てると、不安や課題、希望が目に見えて、気持ちを整理できます。お客さんに届けたい思いもブレないのではないでしょうか。責任を楽しめるように準備していくことが大切なのではないか、と感じられました。
取材協力: 家印
今回取材したのは、"家族の幸せ印"をテーマとする表札屋「家印(いえじるし)」の吉江大紀(よしえ ひろのり)さんです。
家の玄関に設置される、住む人の名を表す表札。その表札をデザインするブランドが長野県塩尻市にあります。
“家族の幸せ印” をテーマとする表札屋「家印(いえじるし)」は、看板デザイナーである吉江大紀(よしえ ひろのり)さんが、14年間勤めた看板会社を退職した後、2017年5月に立ち上げました。彼の企画・デザインする表札は、カフェの看板のようにオシャレであると同時に、素材本来の経年変化を引き立たせるシンプルさが魅力です。
全国から注文が来るという表札ブランドですが、一般的には安定と考えられている会社を辞めて事業を始めたことに、不安は無かったのでしょうか?
「開業は、不安以上に自分の責任を楽しめるという価値がある」と吉江さん。話を伺ってみました。
塩尻にある表札ブランド「家印」
家印(いえじるし)とは?
吉江さんが長野県塩尻市で立ち上げた表札ブランド。家の表札のほか、店舗の看板の企画提案、デザインを手がけます。
漢字表札もおしゃれに。
店舗の看板。店主と相談しながら作り上げていく。
独立・開業のきっかけは、家族との時間と、名前への思い
吉江さんが看板会社で働く日々を送る中で、35歳の時にふと思ったのは、このまま定年まで働けるのか——。
忙しさから家族と食卓を囲むこともできず、家に帰れば子供たちは寝ている時間。家族と過ごす時間について考え始めたことから、時間に融通をきかせられる働きかたをしたい、という気持ちが出てきました。
そこから独立という選択肢を持ち始め、自分の商品を手掛けたい、事業をやってみたい、と志します。自分の作りたい商品とは、家に住む人の “名前を表す表札” です。
「子どもの頃は、自分の名前を正しく読んでもらえたことが少なく、コンプレックスを持っていました。また、自分の子どもに名前をつけたことからも、名前への思いが深まって。名前って大事だな、と。」
まるで店の看板のように、家の印として建てた人の思いが伝わるような、その家に住む家族の名前を表す表札をつくりたい、という気持ちが高まっていったそう。
「看板はお店の方が人生をかけてつくっている。表札も同じイメージでつくってもらいたいなと思いました。」
家族が増えるとパズルのように増やせる六角形の表札。
事業計画書を作ったことで挑戦したいという気持ちが明確に。開業は、自分の責任を楽しめる機会。
開業を決めた後は、塩尻商工会議所が主催の開業スクールに行ったり、中小企業診断士に相談したりしながら、事業計画書を作っていきました。目標、売り上げ、どういうお店にしたいのかなどを、明確にしたそうです。開業に不安はなかったのでしょうか?
「事業計画書を作ったことで不安が自信へと変わり、やりたい、という気持ちがはっきりしました。今までの経験を活かして、自分のデザインを「家印」でやりたいと強く思うようになりました。」
「家印で挑戦したい気持ちが明確になった」と吉江さん
開業後はデザインや運営方法を、すべて自分の意志で決めていきます。こだわりも込められると同時に、結果も自分次第。
「会社にいたときの知識は全て活かされているので、会社には感謝しています。しかし、達成感を味わいづらかったところもありました。今は、自分の思った通りに進められるので、より仕事にやりがいを感じられています。ただ、もし業績が悪くなったとしても、すべてが自分の責任。しかし、不安以上に、自分の責任を楽しめています。」
素材のぬくもりが活かされている表札たち。
経年変化を味わえるデザイン。こだわりを知ってもらう営業は試行錯誤。
デザインは、最近の家の外観や、暮らしに合うように心がけているとのこと。経年変化も楽しめるようにデザインしています。
「経年変化は、暮らしと共に必ず自然に現れるもの。5円玉の素材である真鍮は黒っぽくなるし、木だって削れてくる。だけど、それは家族の年月を表しているもの。味として、変化を楽しめるようなデザインにしています。変化を遅らせるコーティングをあえて望まないお客様もいます。」
古材にレーザー彫刻を施している
お客さんと吉江さんをつなげるのはインスタグラムやホームページ、商業施設や住宅メーカーが主催するマルシェイベントです。会社には売り込みの専門部門があったので、開業して初めて広報を行うことになりました。商品の問い合わせも最初は少なく、知ってもらうまではとても不安だったとのこと。
そんなときに一役買ったのが、開業当初から開設しているインスタグラム。商品の事例や商品説明をふまえた投稿をしています。試行錯誤を続けて今のかたちになったそう。
「インスタグラムで知ってもらい、ホームページに飛んでくれる方がとても多い。ここまで事業を続けられたのもインスタグラムのおかげだと思っています。」
ホームページには吉江さんの思いがつづられていて、思いが通じたお客さんは全国にいます。家に取り付けた写真が送られてくると、とても励みになるそう。家に帰るのが楽しみ、愛着がわきます、などの言葉も添えられてくるそうです。
表札は家のメーカーやホームセンターで取り扱っていることが多い。こだわりを伝える事業者はあまり多くはない。
起業してからは、出会えた方や家族への感謝の気持ちが深まったという吉江さん。
「全国からメッセージを送ってくださるお客さんはもちろんのこと、自営業を営む仲間たちなど、たくさんの楽しい方々と出会えました。交友関係が広がったことはとても嬉しいです。そして、ここまで仕事を楽しくできているのは、なにより家族の理解と協力があったおかげ。とっても感謝しています。」
今後は店主の思いを表す看板も手がけていきたい
今は表札を主に手掛けていますが、今後は店舗の看板に携わる機会も増やしたいとのこと。看板は、お店のコンセプトを店主から聞き取り、0からデザインします。ロゴがあればそれに合わせますが、無ければロゴからつくります。
「看板は店主の思いを宿すもの。看板が無くては、お店を表すことができないと思っています。オーナーさんの気持ちや思いを聞いて、看板に表したい。看板はオープン時から店に寄り添うものなので、お店の立ち上げにかかわれるのは嬉しいです。」
不安を伴う開業ですが、事業計画を立てると、不安や課題、希望が目に見えて、気持ちを整理できます。お客さんに届けたい思いもブレないのではないでしょうか。責任を楽しめるように準備していくことが大切なのではないか、と感じられました。
取材協力: 家印