【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

「趣味や好きなことを仕事にしている人」が、世の中には一定数いるようです。今回取材したのは、趣味を仕事にした人たちが集まる「松本てまりの会」です。

【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

「趣味や好きなことを仕事にしている人」が、世の中には一定数いるようです。今回取材したのは、趣味を仕事にした人たちが集まる「松本てまりの会」です。

こちらは、長野県松本市の工芸品「松本てまり」を作成・販売する、50~60代が活動する団体。こちらでてまりを作成しているメンバーは、かつては趣味で活動をしていました。

趣味を仕事にしたなんて、幸せそうにも思えます。しかし、多分な努力があったようです。

「松本てまりの会」とは?

松本市で江戸時代より受け継がれてきた工芸品「松本てまり」を作成し、実店舗(梓川SA下り)やWebサイトで販売しています。

てまりの鮮やかな模様は、全て糸によって作られる

てまりの鮮やかな模様は、全て糸によって作られる。

個人からはもちろん、企業や自治体からも注文があり、装飾品や贈呈品として人気です。

息抜きや研究のため、みんなで集まって作業。伝統を伝えていく機会にも。

【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

糸を通して模様づくり。高い技術が必要。

メンバーが主に作業するのは各自の家。しかし、月に2度みんなで集まって作業をします。

「家でも作業はできるのだけど、集まればみんなに会えておしゃべりができるので、息抜きにもなっているんです。そして、研究会も兼ねている。他のメンバーのやり方を見て、あ、こんなやり方もあるんだ、なんて発見もあったり。みんな研究熱心。」と、ベテランメンバーは話します。

【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

土台となる「地まり」作り。もみ殻を丸めて、糸で巻いていく。綺麗な球体でなければ、後工程の全てに影響が出てしまう。

「あとは、若手に育ってもらいたい。」
伝統をつなげていくために、技術や知恵を惜しみなく伝えているそうです。

【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

完成した「地まり」。松本市内で作成できる人は、10人いないとのこと。

てまりづくりが好き。仕事の後には、趣味でもてまりづくり。

仕事の注文数の作成が終われば、趣味でてまりを作り始めるメンバーもいます。模様を自分の好みに、試行錯誤して作り出す楽しみも、魅力のひとつなのだそう。

「朝から夜まで作っています。綺麗なてまりを作ることがとっても好きなんです。人にあげたり、部屋に飾ったりと楽しんでいます。」(メンバーの1人)

【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

趣味で作ったてまりキーホルダー。本物と比べるとかなり小さいが、違わぬ美しさ。

趣味と仕事の境界線を引くことが大事。

当たり前のことですが、商品規格と異なるものは商品にはなりません。寸法や模様などに商品規格が決められているので、その通りに作る必要があります。そのことで、仕事にし始めたときは、難しさがあったとのこと。

「趣味の場合は、1つの作品に長く手をかけたり、自分のこだわりや好みをとことん作品に加えたりすることができます。一方、ここの仕事では、発注に合わせて、同じ商品をいくつも作り続けなくてはならないこともあります。」

「趣味と仕事、好きなものを作っていることには変わりはないけれど、その境界線をしっかり引いていなければならないんです。」とメンバーの1人は言います。

【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

趣味では、ひとつ作ったら満足して終わりにできる。しかし、仕事の場合は、いくつも同じテンションで作り続けなくてはならない。気力が必要。

趣味と同じように作っていては、仕事が回りません。好きなことを仕事にすることは幸せそうな話にも思えますが、仕事にするには、多くの点で意識を変える必要があったようです。

【趣味を仕事にする】伝統工芸「松本てまり」づくりから見る、趣味と仕事に境界線を引く努力

工芸品として「手まりを広めていきたい」

では、努力を伴うにもかかわらず、なぜてまり作りを仕事にしたのでしょうか?
それには、「松本てまりをもっと広めたいから。みんなに手に取ってもらえる“商品”を作っているんです。」と語りました。

技術への向上心を持ち、てまりを伝えていく責任感や、誇りを抱いて働く姿がありました。

取材協力:「松本てまりの会