地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

松本と安曇野に3店舗を構える、老舗のパン屋「スイート」。このお店が地元の人々に愛され続けているのはなぜか、スイートの大ファンであるライターが、その理由を探ってみました。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

味よし、居心地よし。こんなパン屋、初めて!

私はパンが大好きです(もっと言うと、炭水化物全般が好き)。

松本市に住み始めて約1年が経ちましたが、越してきて真っ先にリサーチしたのは、近所に美味しいパン屋があるかどうか。時間を見つけては、ネットで調べた口コミの多いパン屋に足を運んでいました。そんな松本パン屋開拓時代に出会ってしまったのが、今回取り上げる、創業1913年のパン屋「スイート」です。

東京、千葉とさまざまな地域に住んできて、街ごとにお気に入りのパン屋を見つけては足繁く通っていたのですが、このスイートは、今のところ総合点で文句なしのナンバーワン! 初めて、スイートあづみ野店のテラスで北アルプスを眺めながら無料のコーヒーをお供に生ハムとチーズのカスクルートを食べたときの衝撃は、忘れられません。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

あづみ野店のテラスから北アルプスを望む。このロケーション、この上ないでしょ!?

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

並柳店の店内。冬、店内の一画にはなんと暖かい暖炉が! 季節ごとに変わるディスプレイもお楽しみのひとつ。

松本や安曇野に暮らしている人にもファンは多いようで、平日も開店した瞬間から来店客が後を絶えず、週末も大賑わい。駐車場に車を停められず、何度、購入を諦めるという無念を味わったことか! 

私が感じているスイートの魅力は、パンの美味しさとお店の居心地の良さの水準が非常に高いということ。そしてそれは、当たり前のことながらお店の人々の努力によって磨き上げられているものなのです。今回の記事では、スイートの魅力とその背景について、パン好きライターが掘り下げてお伝えします!

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

1924年にオープンした縄手本店。 3店舗のうち唯一、べーカリーとカフェを併設。縄手通り沿いにあり、常に観光客で賑わっています。モーニングビュッフェも好評。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

2007年にオープンした並柳店。県道67号線沿いにあり、塩尻、岡谷、諏訪方面からのお客も多いそう。店内と屋外にイートインスペースあり。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

2013年にオープンしたあづみ野店。安曇野エリアに訪れた観光客や白馬・大町方面のからのお客も多数。店内と屋外にイートインスペースあり。

魅力その1 定番から季節限定まで豊富なラインナップ

一度お店に足を運んだことがある人なら共感してくれるはずですが、スイートはパンの種類がとにかく豊富です。

その中でまず抑えていただきたいのは、長野県で初めて販売され始めたのがここスイートだという、「フランスパン」。パリジャン・バゲット・バタールなどがあり、決められた時間に焼き上げられています。売り場には、美味しい焼き方のコツが書かれたポップが置いてあるなど、フランスパンへのただならぬ思い入れを感じます。

60年という脅威のロングセラーを誇っている「やさいぱん」も、スイートを語る上で外せないパンのひとつ。野菜のコールスローがパンに包み込まれていてとても食べやすく、老若男女に愛されている惣菜パンです。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

スイート看板商品のひとつ「やさいパン」。

カレーパンも大人気ですし、そのほかクオリティの高いパンは沢山あるのですが、ここでは、ライターがお気に入りの定番パン2種類と、再販を切に希望する季節限定パン3種類をピックアップして紹介します。あえてここで季節限定パンを多めに取り上げるのは、旬の食材を使って作られる、新鮮で創意工夫に富んだパンの存在を知ってほしいからです。月替わりのものが多く、そのときしか食べられないというレア感にさらなる食欲が刺激されること必至。そんなパンとの一期一会を、スイートでぜひ味わっていただきたいと思うのです。

生ハムとチーズのカスクルート

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

生ハムとチーズのカスクルート。

フィセルの間に生ハム、バター、チーズが挟んであるシンプルなサンドイッチ…なのですが、なぜこんなに美味しいのでしょうか! あづみ野店では写真のレトロフィセル、並柳店ではオーソドックスなフィセルが使用されています。ちなみに私は、硬いけれど噛めば噛むほどうまみが出てくるレトロフィセルのほうが好みです。

山型あんぱん

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左があずみ野店、右が並柳店のあんぱん。

不揃いな山型がなんとも可愛らしいですよね。見た目以上にアンがぎっしり入っているのもポイント。じつはあずみ野店では、常念岳の焼き印を入れようという意見もあったそうですが、ローカル感を出すためにいまの有明山になったとか。成型に手間がかかる山型を貫く、山の街のパン屋ならではのこだわりに感銘を受けました。

さんまサンド(季節限定)

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9月の限定商品、さんまサンド。

くるみパン&さんまのフライ&紅しょうが&レタス&パセリ&マヨネーズという、食材の異業種交流会とも言うべき斬新な組み合わせなのですが、一口食べた瞬間に「この組み合わせ以外に考えられない!」と唸ってしまった一品です。以前は、さんまではなくサバを挟んで販売していたとか。そちらも食べてみたい! 

葡萄のデニッシュ(季節限定

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10月の限定商品、葡萄のデニッシュ。

秋の旬のシナノパープルとシャインマスカットを贅沢に使用。葡萄が輝いて見えるのは上にシロップがかけられているからで、葡萄の下にはさらに生クリームが敷かれています。「甘すぎるのでは!?」と思う方もいるかもしれませんが、圧倒的な葡萄の存在感によって、最後には口の中に爽やかな後味しか残らないのが不思議です。

ゆきだるぱん(季節限定)

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12月の限定商品、ゆきだるぱん。

柔らかな生地のパンが二段に積み上げられて、その上からホワイトチョコレートがたっぷりとかけられています。さらに下段のパンにはチョコクリームが入っていて、うっとり幸せな気分に。チョコソースで手描きされた雪ダルマの表情はひとつずつ微妙に違っていて、選ぶ楽しみも与えてくれます。

魅力その2 パンの味を支える職人たち

「どうしてこんなに美味しいんだろうか」。スイートのパンを食べるたびに、その美味しさの理由を究明したいという思いが募っていきました。そこでスイートのパン職人に詳しく話を伺ってみたところ、職人たちが、その美味しさを保つために心がけていた細やかなこだわりを知ることに。

なによりスイートが大切にしているのは、「焼きたて、揚げたて、作りたて」のパンを提供すること。そのために、同じ種類のパンでも一気に仕上げるのではなく、こまめに作って売り場に出しているそうです。なるほど、だからレジの列に並んでいる短い間でさえも、「◎◎パン、焼き上がりました~」と焼きたてコールを何度も聞くことになるのですね(おかげで、いつもパンを買い過ぎてしまう)。

タイムテーブルが決まっているのはフランスパンと食パンのみで、そのほかのパンについては、パン職人が売り場に出て売れ行きをチェックして、都度必要なパンを作っているんだそうです。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

スイートあずみ野店の厨房。ガラス窓の向こう側には売り場があり、職人たちは売り場の様子を逐一チェックしながらパンを製造。

食パン、菓子パン、惣菜パン、サンドイッチとスイートが販売しているパンの種類は多岐にわたりますが、パンの種類ごとに生地を細かく分けているのもこだわりのひとつだとか。それぞれのパンに適した厚みの生地を、ミリ単位で調整して作っているそうなのです。私たち消費者は気づきにくいことですが、こういった細かい配慮が、「美味しい!」を生み出しているのですね。

向上心を持ったパン職人たちが多いことも、スイートのパンが美味しくあるために必要不可欠な要素です。各店舗にはリーダーがいて、月に一度、新商品の講習会を行っているそうですが、それだけではなく、製粉会社が主催している講習会へ有志で参加したり、全国のパン職人の交流イベント「キャンプブレッド」を自店で開催したり、職人同士で視察ツアーに出かけたりもしているそう。スイートのパンが、美味しくならないわけがない!

さらに、レジのスタッフも素敵です。「店内で召し上がりますか?」「パンは温め直しますか?」と笑顔で聞いてくれるので、会計のたびにいつも嬉しい気持ちになります。これもまた、私がこのお店にリピートしたくなる、大きな理由になっています。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

「ベッカライ・ブロートハイム」「トラン・ブルー」といった名店のシェフも参加しているパン職人のための交流イベント「キャンプブレッド」。今年は9月に縄手本店にて開催されました。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

スイートの忘年会では、このような愉快な一面も見せる職人たち。「だれかに喜んでもらいたい」というサービス精神は、良い味、良い笑い(?)に共通するエッセンスなのです。

魅力その3 街のパン屋であり続けてきたスイートの長い歴史

「ここの弘法山あんぱんが大好きな海外にいる孫がお盆に来て買っておいたら、毎日『世界一のあんぱん』と言いながら美味しそうに食べていました。『ずっと作ってください』とのことです」

「引っ越したので、約3年ぶりに利用しました(旅行で来ました)。変わらず美味しいパン、低価格で高クオリティ、素晴らしかったです♡また機会があれば食べに来たいです」

これは、「ご意見カード」という店内アンケートに書き込まれていた、利用客の声を抜粋したものです。50~60代の男性より「学生のときによく食べていたやさいぱん、数10年ぶりに食べて感動しました」という声もあるなど、同じ場所で長く続けているからこその信頼関係が、スイートと利用客との間にしっかりと育まれていることがわかります。

ここで改めて、スイートの歴史についておさらいしておきましょう。

松本の菓子店「開運堂」の次男として生まれた創業者の渡辺宗七郎氏が、21歳でアメリカのシアトルへ渡り、スイートの前身となる「シアトル開運堂」を創業したのは1913年のこと。その後関東大震災を機に帰国して、1924年に今の縄手本店がある場所に「開運スヰト」を開店しました。以来、時代とともに店舗の増減を経て、近年では2007年に並柳店を、創業から100年を迎えた2013年にはあずみ野店をオープン。さらに近隣にカフェを2店舗構え、松本・安曇野地域を中心とした多くのファンを魅了し続けています。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

縄手本店の店内には、シアトル開運堂で使っていたというステンドグラスやランプ、レジが飾られています。

現在、スイートの経営を担っているのは、四代目社長である渡辺匡太さん。渡辺さんは、職人の交流イベント「キャンプブレッド」を仕掛けたり、縄手本店3階にコワーキングスペース「SWEET WORK」を立ち上げたり、シアトルへの再進出を計画していたりと、開拓精神に満ち溢れた方です。

一方、自らも職人として厨房に立って、パン作りにも積極的に関わっているそう。創業時から変わらない味を守りながら、新しい歴史を創っていく。この渡辺さんの推進力が、いまのスイートの活気を作り上げていることは間違いありません。

地元に愛され続けるパン屋「スイート」を徹底解剖!

四代目である、社長の渡辺匡太さん。

スイートのパンが美味しいこと、そして居心地がいいことの理由を、パン好きライターによる試食と取材を通して掘り下げてみましたが、うまくお伝えできたでしょうか? そうなんです、地元の人たちに長く愛され続けるパン屋には、必ずそれを支える理由があるのです。突き詰めると、「お客様に美味しいパンを食べて喜んでもらいたい」という思いが、パンの味を含むサービス全般に込められているということではないでしょうか。

だから私は、スイートのパンが大好きなのです。
さ、明日もスイートに出かけよう!

スポット紹介

この記事で紹介したスポット情報をお伝えします。

スイート 繩手本店

【住所】 長野県松本市大手4-1-13
【電話】 0263-32-5300
【営業時間】 9時〜17時(ラストオーダー16:30)
【定休日】 水曜日
【アクセス】 JR松本駅から徒歩10分
【駐車場】 なし
【サイト情報】 Webサイト