わたしを空腹にしないほうがいい

気になるものごとや時季に応じて読みたい本をゆるーく紹介するまつもとひろい読み。今回ご紹介するのは「わたしを空腹にしないほうがいい」です。

わたしを空腹にしないほうがいい

街に出るときはいつも、何を食べるかを決めずにとりあえず外に出る。車を持たない私は、駅まで歩く道すがら、今日やるべきことの順番を考える。だいたいおなかの具合と相談して、ご飯を食べる時間を先に決め、それに合わせてルートを考える。電車の時間だけ気を付ければ、駐車場も渋滞も関係ないから、計画は意外と簡単だ。

この前は、早起きが苦手でずっと食べそこねていた「栞日」のモーニングを食べることが目的だった。カウンターで小倉トーストとコーヒーを注文して、焼き上がりを待つ間、二階の本棚へ。そこでたまたま出会ったのが、『わたしを空腹にしないほうがいい』というzineだった。外食のときは限界まで何を食べるか決めかねてしまう私は、街にいるときたいてい、おなかをすかせて歩いている。純粋にその通りだなと思って、トーストを食べながらゆっくり読んだ。

わたしを空腹にしないほうがいい

わたしを空腹にしないほうがいい

今では、料理はほとんど義務のようになった。1年前まで住んでいた東京なら、外に出さえすればなんでも待ち構えているが、ここでは車がなければ、外食もお惣菜もとにかく遠いし数がない。たくさんもらうことの多い冷蔵庫の野菜は日に日に腐っていく。食材に追われるように料理をこなすばかりで、自分でもこのごろ食べ方が適当だなという実感はある。正直、おいしいと思って食べていない。
著者のくどうれいん(私よりも年下だった。)は家族そろって料理好きだという。短い文の中に現れる料理を目で読んだとき、楽しそうでおいしそうだと思った。冷蔵庫の食材でつくるガーリックライス。たまにはホテルオークラのレシピで、しゅわしゅわフレンチトーストをつくる。落ち込んだ時は、家に帰って鶏胸肉をフォークでぐさぐさ。飲みすぎたときは夜中のコンビニでシュークリーム。人間の生活が食べ物と切り離せないなら、とことん楽しんでやろうという、著者の野心のような食欲が、あふれんばかりに伝わってくる。ときどき書かれている盛岡弁の、呪文のような響きを想像しながら読むのも楽しい。

「どれだけつらくても、おいしいお寿司はおいしい」。食欲がなくなったときに寿司をおごられ、素直に感動した著者の言葉だ。私も口のなかでトーストをもぐもぐしながら、同意した。つくづく、おいしいものは日々食べたほうがいい。
明日こそちゃんとごはんをつくろう。と思って、その日はたくさん食料品を買い込んで帰った。


※本書はzine(小規模出版の本)です。欲しい方は栞日(近日入荷予定)か、各書店のオンラインショップで手に入ります。

恵文社一乗寺店(オンラインショップ) 

スポット紹介

この記事で紹介したスポット情報をお伝えします。

栞日

【住所】 長野県松本市深志3丁目7-8
【電話】 0263-50-5967
【営業時間】 7:00-20:00
【定休日】 水曜日+臨時休業
【サイト情報】 Webサイト