文化の語り部としての「祭り」

気になるものごとや時季に応じて読みたい本をゆるーく紹介するまつもとひろい読み。今回ご紹介するのは「絵物語 古事記」です。

文化の語り部としての「祭り」

絵物語 古事記
富安陽子(文)、山村浩二(絵)、三浦佑之(監修)
 

夏は日本中でお祭りシーズンだ。松本にとっては、旧暦である8月に七夕の人形が町中に飾られ、ぼんぼんで踊り狂い、「セイジ・オザワ松本フェスティバル」でクラシック音楽のファンを迎える夏だ。町中にお祭りムードが漂う。

県外の大きな神社の近くで育った筆者は、お祭りというと古来の神様を讃えるイメージがある。神社とその門前の町会を中心に行われるお祭りは神事であり、どこか厳かな儀式を含むような印象がある。もちろん松本にも神様を祀る神社は複数あり、松本の中心部にある四柱神社には、由緒正しい神たちが祀られている。しかしながら、松本で人気を博している祭りの数々は、必ずしも神様に関連があるとは限らないようだ。試しに、比較的大きな松本の「祭り」をわかる範囲で並べてみると、以下のようになる。

1615年より前? 松本あめ市(武田と上杉の「敵に塩を送る」古事に由来)
1692年より前? 深志神社 例大祭天神祭(大坂の陣の戦勝帰陣に由来)
1800年頃 ぼんぼん・青山様(江戸時代の町人が始めたとされる、
祖先の霊を慰める行事。松本ぼんぼんの名前の由来となる)
1975年~ 松本ぼんぼん(前述の「ぼんぼん」に由来するダンスコンテスト)
1985年~ クラフトフェアまつもと
1992年〜 セイジ・オザワ松本フェスティバル
(旧称:サイトウ・キネン・フェスティバル松本)
2004年〜 松本そば祭り

ちなみに諏訪の有名な「式年造宮御柱大祭」(いわゆる「御柱祭」)の歴史は、平安時代より前にさかのぼるといわれ、かつて日本を収めていたオオクニヌシの息子であるタケミナカタが諏訪に逃げてきた際、4本の柱を結界として張ったことに由来するとされている。

ところで、日本を最初に作ったという神々の物語は、日本最古の歴史書である「古事記」に語られている。

文化の語り部としての「祭り」

神といっても、なんでも思い通りにできてしまうような全知全能の神たちではない。怒ったり、失敗したり、泣き虫だったり、存在が空気(!)だったり。日本の最高神であるアマテラスでさえも、わりと残念な神様だ。彼女も、天の岩屋戸にひきこもったり、天上で結論の出ない会議を延々と繰り返したりしている。そんな物語が綴られている古事記を読むと「あぁ、これは日本の物語なんだなぁ」と妙に納得してしまう。『絵物語 古事記』は児童書なので、読みやすい文と迫力のある絵で、とてもわかりやすく日本の神々の物語を知ることができる。

文化の語り部としての「祭り」

しかし、日本の神々は古事記に語られているだけにとどまらない。古事記には、地上を治めるためにアマテラスが孫を遣わす際、見たこともない神が地上との間に立っていて、名前を尋ねさせた、というエピソードがある。日本には八百万の神々がいるというが、筆者が驚いたのは、最高神であるアマテラスも全員は把握できないほどその数が多かったということだ。実際、安曇野の道中に多い「道祖神」も、古事記には載っていないが、村や旅の安全を守るとされる、この地域の神様だ。

話を祭りに戻すと、祭りとは、古来の物語にその土地での出来事やきっかけが加わって発生するように思う。松本の場合、神話に限らず、塩であったり祖先であったり、その時々に人々が感謝や祈りをささげたものが、祭りの由来になっている。祭りを始めた当時の人たちが、普段の生活を営むなかで、娯楽や日々の慰みを求めていたのだろう。現代においてはそば祭りやワインサミット、ビアフェス信州など、食べ物や暮らしに関する祭りが、観光や地域振興を目的に増えている。ということは、それだけこの地域の人びとが、食文化における誇りや関心が高いということだろう。

今も昔も、祭りにはその地域が大切にしているものが現れる。祭りを楽しむとともに、その土地で育まれてきた歴史に思いをはせるのも、一興である。

この記事で紹介したお祭り

セイジ・オザワ松本フェスティバル

開催日:2018年8月18日〜9月7日
会場:キッセイ文化ホール、まつもと市民芸術館等
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式年造宮御柱大祭

開催日:2022年予定
会場:長野県諏訪地方
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そば祭り

開催日:2018年10月6日〜8日
会場:松本城公園 他
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信州ワインサミット

開催日:2018年6月1日 〜 10日
会場:松本市花時計公園
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ビアフェス信州

開催日:2018年9月14日 〜 17日
会場:松本城公園
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