シェアする、という街の魅力

気になるものごとや時季に応じて読みたい本をゆるーく紹介するまつもとひろい読み。今回ご紹介するのは「ポートランド・メイカーズ クリエイティブコミュニティのつくり方」です。

シェアする、という街の魅力

街の魅力とは、なんだろうか。

美味しいレストランがたくさんあること、地元ならではのものにたくさん出会えること、他の土地に誇れる伝統文化があること、風景がきれいなこと。こうした魅力が旅行ガイドに載っていたら、ぜひ訪れてみたいと誰もが思うだろう。でも、観光ではなく、安住の地として選ぶなら、長く住み続けられる街としての魅力は他にもあるような気がする。

昨年夏、アメリカ・オレゴン州にあるポートランドという街を訪れてみた。

ポートランド・メイカーズ

ニューヨークやサンフランシスコに比べると、決して大きくはない地方都市だが、全米の住みたい街ランキングではたびたび上位にランクインしている。街の中心部には個人営業のレストランや、地元のクリエイターの雑貨を売るショップが軒を連ね、そこかしこにある広場で毎日のように新鮮な野菜や食品のファーマーズマーケットが開かれる。都市は広がりすぎないように保護されていて、街の中心からすぐ近くには散歩やサイクリングが楽しめる自然が残る。

ポートランド・メイカーズ

ポートランド・メイカーズ

訪れたきっかけは、こうした食文化の多様さや素敵な景観だった。しかし旅行を振り返って、魅力のうちかなり大きな部分を占めたのは、暮らしている人々の気さくな雰囲気だ。たまたま開店前に訪れてしまったミニコミ誌の図書館(Independent Publishing Resource Center)では、準備中にも関わらずスタッフが図書館をわざわざ開けて説明してくれたことに加え、ついでに併設の活版印刷所も案内してもらい、受付のお兄さんにアート系雑貨の店を紹介してもらったりもした。バス停で話しかけられたおじさんは、英語が苦手な私でもわかるほど簡単な言葉とジェスチャーを使い、旅の無事を祈ってくれた。

この街は自然と魅力的になったのではない。都市計画をつくり、フレンドリーで自由な文化を生み出した人たちがいたからこそ今の街がある。「ポートランド・メイカーズ」は、そんなポートランドの魅力を現在進行形で生み出している特にクリエイティブな6人に焦点をあて、その人と街が育んできたクリエイティビティのしくみを解明しようとする本だ。

シェアする、という街の魅力

『ポートランド・メイカーズ クリエイティブコミュニティのつくり方』山崎 満広

本書において著者の山崎満広は、クリエイティブな人々が集まるコミュニティの条件を整理している。中でも筆者が特徴的だと思ったのは、このコミュニティではわからないことで仲間に助けてもらうだけでなく、うまくいったことはライバルでもシェアするという点だ。ポートランドの起業家支援拠点のひとつ、Portland Incubator Experiment(ポートランド・インキュベーター・エクスペリメント、略してPIE)の創設者リック・タロジーは、PIEを設立する際、大企業と中小企業がどちらも同じ社会の中で共存することを追求したという。その後PIEは投資が主たる支援となるが、仮に投資した起業家が失敗しても、失敗を生かし次の起業家のサポートに入ることで事業が成功すれば、結果的にコミュニティにとってもPIEにとってもポジティブな成果が得られるとリックは考える。競争ではなく助け合いによって、次世代へ良い影響を残していくということが、ポートランドでの成功の考え方なのだ。

ポートランドの歴史は、同じくアメリカ西海岸にある大都市サンフランシスコとよく対比される。かつてゴールドラッシュに沸くサンフランシスコには、一攫千金に野心的な若者が集まった。それに合流せず、あえてポートランドに住むことを選んだ者たちは、仕事ではなく自由な暮らしや自分の楽しみにこそ生活の軸を置いたといわれる。自分の夢を叶えるためにコミュニティに手伝ってもらい、他人の夢が叶うのを見とどけるためにシェアする。この助け合いの考え方は、小さなプレイヤーが集まった街だからこそできることだと、ポートランド在住のクリエイターであるジョン・ジェイも語っている。なんと自由で、なんとわくわくするような生き方だろうか。

シェアの文化は今や世界中で広まり、シェアリングエコノミーとして日本でもさまざまな事業を生み出している。本連載で取り上げた本を置いていただいている松本市内のコワーキングスペース「SWEET WORK」も、シェアの流れをくむ事業のひとつ。

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Sweet Workはさまざまな人と企業が場を共有し「共に喜び、関わり、創り上げていくこと」を目標に掲げている。ここは松本の老舗ベーカリーに併設するスペースとあって、フリーのパンやコーヒーを目当てに、新たなコミュニティを作りたい人々が集まってきている。夢を持っている人や、考えを深めあう仲間が欲しい人は、こうしたコワーキングスペースを訪れてみると、その実現の一歩を踏み出せるかもしれない。

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