買い物からつながる世界

気になるものごとや時季に応じて読みたい本をゆるーく紹介するまつもとひろい読み。今回ご紹介するのは「フェア・トレードを探しに FAIR TRADE TRAIL」です。日々の買い物の話からフェアトレードまで広がります。

【編集中】買い物からつながる世界

松本の路地には、個性的で上質なモノを扱う雑貨店が多いと思う。
量販店では売っていないような、国産の綿を使った柔らかくあたたかい服、小さいけれど使いごごち抜群の食器。
いずれも値段は少しお高めだけれど、それらの店の店員さんたちと話すたびに「良いものと長く付き合うこと」が日々の暮らしをどんなに幸せにしてくれるか、いつも憧れてしまう。
そうするうちに、自分の普段の買い物も少し見直すようになってきた。せっかく稼いだお金で買うのに、セールやお買い得感で、いかに「なんとなく」「その場しのぎ」で買いものをしてきたか!日々反省しつつ、自分が求めてるものとお金のバランスを気にしながら選んだりすると、たとえ高くても買った後の満足度と大事にする度が全然違うのだ。

値段には理由がある。私たちが相応の対価を支払うからこそ、それを作ってくれる人たちの生活は成り立ち、モノを作ることができる。
でも、私たちは普段買うものの一体どれくらいについて、その対価が十分であると知ることができるだろう。

例えば、もうすぐバレンタインを迎える店頭に並ぶ、さまざまな種類のチョコレート。
日本は主にアフリカや中南米からチョコレートの原料となるカカオ豆を輸入しているが、その国民の多くは農業従事者で、貧困である。
というわけで、今回は買い物からちょっと複雑な世界の貿易事情について考えてみたいと思う。

買い物から対価を知る手段として、真っ先に思い浮かんだのがフェア・トレードという単語。
フェア・トレードとは、英語を直訳すれば「公平な貿易」。
「発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組み」だそうだ。
(参考:わかちあいプロジェクト
本を探してみると、モノクロの写真やイラストがコラージュされたような表紙のかわいい本を図書館で見つけた。

フェア・トレードを探しに

フェア・トレードを探しに/三浦史子

この本は、ほとんど旅行記といえるかもしれない。フェア・トレード先進国であるイギリスから、取引先の農園があるインドやガーナを取材して得た、たくさんの人々の写真とインタビューを中心に、フェア・トレードをめぐる実情を掲載している。

しかし、読めば読むほど、現在のフェア・トレードが一筋縄ではいかない、複雑な状況であるのが明らかになる。そもそも途上国の農家は、先進国で大量生産された野菜がたたき売りされているのにかなわず廃業に追い込まれるような状態なのに、貿易で収入を増やしただけではやっていけるはずがない。(読みながら「なんて問題に手を出したんだ…」と後悔しかけたのはここだけの話。)

一方で、フェア・トレード団体と取引する農園で働く人たちは、取引で支払われる「フェアトレード・プレミアム(奨励金)」や、農業以外の収入につながるスキル(ろうけつ染めや石鹸づくりなど)を教わったことで、昔より生活が改善したことを素直に喜んでいた。またインドで手工業を営むグループは、「先進国の製品の原料をつくる=先進国の理論で動く」のではなく、刺繍という独自の手工業を通じて、独立性を保ちながら収入を得ていた。どの人も、子どもたちの代では生活がより改善することを願いながら働いている。随所にちりばめられた写真で彼らが静かに笑っているのを見ると、小さな希望が感じられる。

フェア・トレード

フェアトレード

(フェア・トレードを探しに/ より引用)

現状では、フェア・トレード製品を買うだけですべて解決するとまでは言えないけれど、結局のところ、私たちの買い物が遠い異国の生産者につながっていることは事実。私たちが思いをはせることで、世論を変え、企業を「改心」させられる可能性はある。

著者は、先進国で経済を回す私たちが、「むやみに悪影響を及ぼさない」ように、要らないものを作るのをやめ、無駄なものを買わないことが、フェア・トレード運動の次の段階なのではと説く。せっかく大事な人にあげるチョコレートならば、いつもより少し時間をかけて、まっとうに、心を込めて作られたものを選んでみてはどうだろう。

ちなみに、日本でフェア・トレードの企業として有名な「ピープル・ツリー」のチョコレートは様々なフレーバーがあり、松本でもパルコ2階のthingsly by Lolaなどで買える。

peopletree

パッケージも可愛いピープル・ツリーのチョコレート

コーヒー豆チェーンの「カルディ」やスーパーの「イオン」は、独自ブランドでフェア・トレードのチョコレートを作成・販売している。

また、企業と生産者のかかわり方について知る指標は、フェアトレードマークの他にも、「UTZ認証」(持続可能な農業)や、「レインフォレスト・アライアンス認証」(農業、林業、観光業などの団体向け)があり、世界的にも本当にたくさんある。興味のある方はこの機会に調べてみても面白い。
 

今回紹介した本

フェア・トレードを探しに FAIR TRADE TRAIL

著者:三浦 史子
発売日:2008/3/13
単行本: 303ページ